機械要素として歯車は伝動装置に広く使用されています。この歯車が現在のように普及した理由としては次のことが考えられます。
小は時計用歯車から、大は船舶用タービン歯車まで伝達馬力の範囲が広いこと。動力を確実に伝達することができること。歯数の組み合わせをかえることにより、回転比を自由に、正確に選べること。歯車の組み合わせの数を増減することによって回転軸相互の関係位置を自由にできること。平行軸、直交軸(交差軸)、食い違い軸などのいろいろな軸に使用できます。
歯車には、たくさんの種類があります。
これらの歯車を分類する方法としては、歯車軸の関係位置によるのが最も一般的で、平行軸、交差軸、食い違い軸の3つに分類されます。
平行軸の歯車には、平歯車、はすば歯車、内歯車、ラック、はすばラックなどがあります。交差軸の歯車には、すぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車、ゼロールかさ歯車などがあります。食い違い軸歯車には、ねじ歯車、ウォームギヤ、ハイポイドギヤなどがあります。
ピッチ円直径を歯数で割った値をモジュールといいます。また、モジュールで歯の大きさをあらわします。
標準の並歯歯形では、モジュール 1の場合の歯の高さは2.25mm以上
モジュール 2の場合の歯の高さは4.5mm以上
というようにモジュールが大きくなるほど歯の高さも大きくなります。
基準ピッチ線から歯切りピッチ線をモジュールのX倍だけずらしてつくられた歯車を転位歯車といいます。
1設計上に中心間距離の制約がある場合、転位係数で調整する。
2歯元の切下げ防止
の2点について説明させて頂きます。
1転位係数で調整
設計上中心間距離が決まっている場合、又は同じ機械で替歯車によって減速比を変えたい場合など標準平歯車で中心間距離と一致しないと転位係数で中心間距離を調整することがあります。
例えば、中心間距離が57で制約されている場合
モジュール 1.5 小歯車 30、大歯車 46は標準平歯車で、中心間距離が57となり問題ありません。
モジュール 1.25 小歯車 36、大歯車 53は標準平歯車で、中心間距離が55.625となってしまいます。
モジュールと歯数を変えずに軸間を合わせたい場合、転位係数を利用して、大歯車にプラス転位+0.48329させると中心間距離が57となり、替歯車として使用できます。これは、転位平歯車と言われてます。
2歯元の切下げ防止
圧力角20°の場合、歯数が17以下になると切下げ(歯元が細くなり曲線状にえぐれた状態)が起こり歯の強さが弱くなります。
一般的にプラス転位すると歯元厚さが太くなります。この特徴を利用して、プラス転位することにより歯元の切下げ防止を行います。歯数が少ない歯車には有効で、噛み合い率が増加します。
平歯車で圧力角20°の場合
標準平歯車
またぎ歯厚(W)=モジュール×(0.01400554×歯数+2.95213×またぎ歯数-1.47606)
転位平歯車
またぎ歯厚=標準の平歯車のまたぎ歯厚(W)+0.68404×転位係数×モジュール となります。
歯車に関して興味をもたれた方や他にお知りになりたいことがある方は歯車コミュニケーションもぜひご覧ください。